リーダーズVOICE! マーケティング現場レポート最前線

Action

永井 弘久さん

所属企業
株式会社マッキャンエリクソン
役職
グループプランニングディレクター
所属部署
戦略プランニング本部
出身校
横浜国立大学 工学部 機械工学科


永井さんのとある一日

08:00 起床
シャワーを浴びる。(頭スッキリ!)
08:30 朝食
コーヒーは必ず飲む。食事は色々、とらないことも・・・
09:00 出勤
09:15 駅近くのドトールで一週間分のスケジュールと仕事の優先順位を確認。プロジェクトAの提案内容の叩き台を作成。
常に持ち歩く手帳に何か思いついたらいつでもどこでも
メモをする
10:30 出社。メールチェック→ミーティング、プレゼンテーション等スケジュールに追加。
11:00 プロジェクトAのインターナルミーティング
全体のスケジュール&マイルストーンの確認と提案内容に関するブレインストーミング。(まずは提案全体の枠組みに関して)
12:00 ランチ
青山一丁目という土地柄、結構お高め。気分転換のため、できるだけ外へ。
13:30 プロジェクトBの2週間後の得意先へのプレゼンテーションのドキュメント作り。
15:30。 プロジェクトCの表現案が制作部門からあがり、それを見ながらチーム内でディスカッション。7案から3案に絞る。
17:30 本部長と人事及び事務的なイシューに関して相談。
18:00 プロジェクトBのドキュメント作り再開。
19:30 チームの仲間で残業メシを食べる。
20:30 プロジェクトBのドキュメント作りに戻る。
22:00 部下が作成した戦略ドキュメントのチェック。修正点に関してアドバイスを。
23:00 退社
この時間、意外と電車が混んでてグッタリ。
00:00 帰宅
デザートを食べながらテレビとネットでニュースとスポーツ関係の結果をチェック。その後入浴。
01:30 就寝。

この広告会社が担当した広告を目にしない日は無い。
数々の広告賞を受賞したマイクロソフトのTVCMや新聞広告。大竹しのぶが主演をつとめ、注目を集めたマスターカードのコマーシャル。常に生活者の視点で世の中に広告を送り続けてきた。

その広告会社は株式会社マッキャンエリクソン。
全世界133カ国180都市で活動する世界有数の規模を持つ広告会社だ。

今回のリーダーズボイスでは、常に人気企業ランキングで上位を占める広告会社、株式会社マッキャンエリクソンで戦略プランニングを担当する永井さんに密着した。

生活者インサイトを発掘するメールマガジン

「McCANN Pulse Letter(tm)」

株式会社マッキャンエリクソン

http://www.mccann.co.jp/

永井さんの現在のお仕事について教えて頂けますか?

現在、私は企業のコミュニケーション戦略を立案する、戦略プランニングという仕事をしています。例えて言うなら、「医師」のような仕事でしょうか。クライアントが抱えている課題を伺い、それらを解決するためのコミュニケーション戦略を提案することが主な仕事です。

世の中、至る所に広告が溢れていますが、生活者にとって本当に意味のある「心のツボ」を刺激されるような広告が少ないのが現状です。その「心のツボ」を、我々は「生活者/消費者インサイト(洞察)」と呼びますが、そこを刺激するようなソリューションこそが、真に効果的なコミュニケーションなのです。

現代は、物質的には豊かな時代です。欲しいものも食べたいものも、およそ入手できないことはありませんし、その中で生活者にニーズなんて生まれてこない。だからこそ、生活者の心の奥底を読み解き、「ディマンド(需要)」そのものを創造していくことが求められているのだと思います。私共マッキャンエリクソンは、需要そのものを創造していくこと(「ディマンド・クリエイション」)をミッションとして日々仕事に取り組んでいます。

現在私が担当させていただいている企業は、食品、金融、エンターテイメントなど多岐に亘ります。それぞれのクライアント毎に機能横断的なチームを組み、アイディアを練り、ベストなソリューションが提供できるように、日々努力しています。様々な業種のクライアントに対する提案を、個性的で豊かな才能を持つ仲間と作り上げていく。これがマッキャンエリクソンで働く、最大の魅力だと感じています。

近年、広告会社の業務領域も拡大してきています。広告計画のみならず、事業・商品開発やブランド戦略の立案などに携わることも増えてきました。


入社以来プランニングを担当されているのですか。

実は、大学卒業後メーカーに就職しました。工学部機械工学科を卒業し、エンジニアとして3年ほど働きました。毎日、研究に没頭する毎日も楽しく、不満は全くありませんでしたが、学生時代から興味があった「広告」に携わる仕事をしてみたいという考えが日に日に強くなり、マッキャンエリクソンに転職しました。

数ある広告会社からマッキャンエリクソンを選んだのは、たまたま知り合いにマッキャンエリクソンで働いている方がいて、すばらしい会社だと聞いていたことと、これもたまたまですが、私の妻が新聞でマッキャンエリクソンの求人広告を見つけたことが理由です。そう考えると、私にはセレンディピティ(注:ふとした偶然をきっかけに、幸運を掴む能力)があるのかもしれません(笑)。

理系出身ということもあり、最初は統計学などを応用した広告効果モデルの開発などにも携わりましたが、入社以来ほぼ18年間戦略プランニングを担当しています。


数多くのプロモーションを手がけてきたと思いますが、忘れられないお仕事を教えて頂けないでしょうか。

うーん、そうですね。ヒトやモノが動いたのを実感したときでしょうか。

殆どがチーム作業ですから、良い提案ができたという実感があると、チームで共有できる達成感があり、それそのものが忘れ難い経験になります。しかし、予想していた、もしくはそれ以上の「結果」が伴うと、その喜びが何倍にもなります。

パッケージソフトウェアの販促キャンペーンで、目標本数を大幅に上回る結果を出したことや、エンターテイメントの広告がターゲットの心のツボを刺激して世の中で高い評価を得たことなどは、この先もずっと忘れられない素晴らしい経験になりました。


大変聞きにくい質問なのですが、誰にもいえない失敗をお聞かせ下さい。

来ましたね。聞きにくい質問(笑)。
私の場合、幸運なのか単に楽観的過ぎて楽しいことしか覚えていられないからなのか(笑)、大きな失敗という記憶が今のところありません。ただ、忘れられない経験はありますね。

今から、10年以上前のことです。
あるクライアントへの提案内容について、担当チームの最高責任者である営業本部長ともめた事がありました。こちらは30歳そこそこの若造、相手は50歳をこえた大ベテランなのに、お互いだんだん熱くなって最後はケンカ寸前という雰囲気でした。最終的に本部長が折れて、私のアイディアをクライアントにプレゼンしたのですが、結果は惨憺たるものでした。若気の至りと言えばそれまでですが、プレゼンが終わっても本部長は私を非難することなく、「これも経験だからな」と笑いながら声を掛けてくれたことを覚えています。

今から思うと、その方には本当に鍛えてもらい、感謝しています。

私は、この経験から、「判った気になる」怖さを学びました。みなさんも就職後、経験すると思いますが、働き始めて3年から5年くらい経つと仕事を判ったような気がする時が来ると思います。しかし、それは殆どの場合錯覚です。判ったような気になるその奥に、まだまだ学習すべき知識や知恵やノウハウがあります。

「判った気になる」と、成長はそこで止まってしまいます。その判った範囲だけで効率良く仕事をこなそうとするからです。若いときこそ、背伸びして、多少無理をすることで自分自身の実力を飛躍的に伸ばすことができるのに、その可能性を自ら捨ててしまうのはあまりにもったいない。

そうならないためには、時に自分自身を客観的に観察し、自己評価する癖をつけておくことが大切だと思います。


永井さんはどのような学生生活を送っていたのですか?

ぼくの学生時代は、ちょうど日本がバブル景気を向かえる直前でして、日本全体がイケイケになりかけていた時代でした。今の学生以上に大学をナメていたと思います(笑)。もちろんたくさん遊びました。

ただ、理系出身ですが、とにかく本は沢山読みました。夏目漱石の全集を読破しましたし、現代思想が面白い時代でしたから、栗本慎一郎、浅田彰、中沢新一なども読みました。吉本隆明さんの「共同幻想論」なんて60年代後半に書かれた本ですが、その当時でもとても新鮮だった記憶があります。もちろん、流行していた村上龍や筒井康隆も読みましたけど(笑)。

最近のビジネス書も、もちろん役立つと思いますし、ネタ本として活用する事はできますが、知的体力をつける、あるいは思考能力を磨くという意味で、評論や現代文学を時間のある学生時代に読んでみる事をおススメします。

私の読書経験は、広告会社のプランニングという一見無関係な仕事にも確実に役立っているような気がします。


永井さんの今後の目標を教えて頂けますか。

私は、30代半ばを過ぎてようやく自分のやりたい事に気づきました。 学生の皆さんにも是非お伝えしたいのですが、「やりたい事がわからないから何もやらない」のではなく、「やりたい事がないからとりあえず何かやってみる」という姿勢を大切にして欲しいと思います。 「とりあえず何かやってみる」ことによって、様々なモノやコトに出会い、必然的に興味が湧いてきます。そして、その興味に従っていれば、意識せずとも知識や経験が蓄積されていきます。 そして、いつかそれらがあるベクトルに向かって少しずつまとまってきて、自分自身が心からやりたいことが見えてきます。何も動かなければ自分のやりたい事なんて分からないものなんです。

さしあたり今は、二つの目標というか興味の矛先(笑)があるのですが、一つ目は「人を育てる」ということです。私たちの業界は人が全てです。ですから、個々の人材の能力をいかに伸ばすか、またその能力をいかにして最大限発揮してもらえる環境や機会を準備するかは、マッキャンエリクソンの将来にとって極めて重要なことなのです。

もう一つは認知心理学や脳科学を広告コミュニケーションに応用するということです。今目の前にあるモノを買うという決断も、特定のブランドが好きになるという感情も、全て脳内で行われています。ですから、脳の働きを知ることや、認知による心理変化を探ることは、必ずコミュニケーション活動に活かせると信じています。

このところ茂木健一郎さん(注:脳科学者)にハマッていまして、彼の著書やインタビューにかなり触れていることも多分に影響していると思います(笑)。


最後に学生へのメッセージをお願いします。

絶対遊んだほうが良いです(笑)。

ただ、遊ぶ上で大切な事は、「浅く広く」どんなことにも挑戦する気持ちと、その中で特に興味を持ったことを「より深く」追及していく探究心を併せ持つことだと思います。それと同時に、サークルや遊びを通じて人間関係の築き方を学ぶ事ではないでしょうか。

このような能力はどのような仕事に就こうとも、社会に出てから確実に役立ちますからね。


インタビュー後記

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早稲田大学4年 政治経済学部 相田安彦

青山のおしゃれなインテリジェントビルに本社を構えるマッキャンエリクソンで対応してくださったのは広報を担当されている大木様と、インタビューに応じていただいた永井様。お忙しい中、快くお時間を頂き本当にありがとうございました。

広告会社の業務内容だけではなく、ご自身の経験を踏まえての仕事に対する取り組み方や思いを聞くことができたのは、来年から社会人になるぼくにとってとても勉強になりました。

「やりたいことが見つからないから何もやらないのではなく、やりたいことが無いからこそ何かやってみる。何もやらなければ見つかりませんよ」という言葉は就職活動や進路を決める際に悩んでいる学生達に是非聞いたもらいたいフレーズです。広告会社を志望する学生のみならず、就職を控えた学生全員が参考になるのではないでしょうか。